印堂 丈一郎の不可解な生活
目の前に、齧って下さいと言わんばかりに倒れている人間。

見逃す手はない。

グールは転倒した丈一郎に飛び掛かる!

人間とは一線を画する跳躍力、何かを腐らせたとしか思えない強烈な饐えた臭い。

グールが覆い被さってきた途端に、丈一郎は込み上げてくるのを抑えるのに必死だった。

だっていうのに、グールは容赦ない。

何とか丈一郎の肉を齧ってやろう、餌にありついてやろうと、彼に顔を近づける。

ガチガチと歯を噛み合わせる音が、丈一郎の耳に届く。

「ば、化け物っ、こっち見んなっ、俺ぁ筋張ってんぞっ、霜降りじゃねぇぞっ、食ってもかてぇばっかで美味くねぇぞっ」

言ってはみるものの、グールに言葉が通じているのかいないのか。

丈一郎を無視して、尚も食らい付こうとする。

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