印堂 丈一郎の不可解な生活
ガクガクと膝が震えた。

あぁ…やっぱりそうだった…。

長い黒髪、青白い肌、隈の残る眼、紅いインバネスコートの下は比較的現代的なスーツ姿。

そして両手に携えるのは、とても普通の人間では扱えないような、白銀の大型自動拳銃サルガタナスと黒鉄の大型自動拳銃ネヴィロス。

「貴様の『サー(英語圏で男性に対して用いられる敬称)』、この黒十字 邪悪(くろじゅうじ じゃあく)を無視するつもりだったのか?」

目の前の男はそう言ってニヤリと笑った。

黒十字 邪悪。

私はこの男をよく知っている。

2000年以上前に、人間だった私を眷属として従えた人物。

地獄の大公爵にして支配者の一人という有力な悪魔。

つまり私のマスター。

滅びの五人として数えられる中でも、最も強力であると目される化け物だった。

< 125 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop