印堂 丈一郎の不可解な生活
「何れ騒ぎは起きるだろうと思っていたが、まさかここまではとな」

建物の屋根から声がする。

見上げる丈一郎とサー。

そこに立っていたのは咢と、もう一人。

身体の特定の点を刺激する為に生体に刺入または接触する治療に使う鍼を手にした黒装束の若い男だった。

「咢!」

丈一郎が叫ぶ。

「セシル・カイルを庇うような真似をするから、余計な面倒が増えるんだ。さっさと始末しておけばよかったものを」

屋根から飛び降りた咢達は、サーの前に立つ。

「ここは咢とこの雪城 洋司(ゆきしろ ようじ)が引き受ける。印堂 丈一郎、お前はそこで大人しく見ていろ」

鍼の男が肩越しに丈一郎を見ながら言った。

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