印堂 丈一郎の不可解な生活
丈一郎の走る速度は、決して遅くなかった。

調息の修行を短期間でも行った事で、同時に身体能力も高まっている。

私を抱き上げているとは思えないほどの瞬足だった。

でも。

「!!!!」

サーは更に瞬足だ。

人間の走る速度に比べれば、瞬間移動と言ってもいい。

丈一郎が路地裏を出て大通りに出る前に、あっという間に先回りしてしまった。

「無関係の人間を巻き込むのは一向に構わんが、騒がれるのは何かと面倒なのでな。貴様にはこの薄暗い路地裏で死んでもらうぞ、印堂 丈一郎」

「誰が死ぬかよ」

抱き上げていた私を下ろして庇うように立ち、丈一郎は構える。

「貴遊は俺が守ってやるぜぇええ」

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