印堂 丈一郎の不可解な生活
丈一郎の表情が凍り付くのが見えた。

サーに唇を奪われながら、私自身、大きなショックを受けるのを感じる。

丈一郎の前で唇を奪われた。

丈一郎以外の男性に唇を奪われた。

想像もしなかった。

その事が、こんなにショックだなんて。

「何を驚いている?」

私、そして丈一郎に対し、サーは嘲笑と共に言う。

「セシルはこの俺の眷属だ。その所有権は全てこの俺にある。唇も、身も心も、その純潔さえもな」

口角をつり上げるサー。

それが丈一郎に対する挑発なのは言うまでもなく、そして。

「っっっっっっ…!」

丈一郎の中で、何かが音を立ててプツリと切れた。

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