印堂 丈一郎の不可解な生活
「わかっていないな、セシル・カイル。貴様は記憶を失っていたとはいえ、印堂 丈一郎と共に暮らしていたのではないのか?」

サーの口角がつり上がる。

「僅かに相対しただけだが、俺は見抜いたぞ。俺にわざわざ立ち向かってくる馬鹿はいないと貴様は言ったが」

そこでたっぷりと間を置いて。

「印堂 丈一郎はその馬鹿なのではないのか?見ただろう、この俺相手にあの激昂ぶりを」

「……」

サーは聡明で狡猾だ。

敵の本質を見抜く事に長けている。

あの短時間のやり取りで、あっという間に丈一郎の性格を見抜いていた。

そして馬鹿故に後先を考えず、己の身を捨ててまで私を助けに来るだろうという事も。

「真なる大馬鹿者…だがそういうのを、真に勇気ある『黄金の魂』の持ち主とも言うがな」

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