印堂 丈一郎の不可解な生活
防戦一方だった。

ベナルの激しい攻撃の前に、二人は手も足も出せない。

ただただ逃げ回るだけ。

咢達を仕留めようと荒れ狂うベナルは、壁を、地面を、悉く抉り取っていく。

こんな狂風、誰が止められるのか。

誰にも止められる筈がない。

それだけに。

「……」

ベナルは疑心を抱いていた。

おかしい。

無抵抗すぎる。

如何に手出しができない攻撃を前にしているとはいえ、これほど防戦一方とは。

< 163 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop