印堂 丈一郎の不可解な生活

「貴遊を返してもらうぜ、邪悪よぉおおぉお」

今にも飛び掛かっていきそうな形相で、丈一郎は言った。

怒り心頭だ。

元々丈一郎は感情のコントロールが下手だ。

頭に血が上ると、何をしでかすか分からない一面がある。

それは彼の欠点だと私は思うけど、サーはそう評価していないようだった。

寧ろその感情のコントロールの下手さ加減が、彼の爆発的な力を生み出す原動力だと考えている。

決して甘く見ない。

だから。

「いいだろう」

傍らに立つ私。

サーはその私の背中をトンと押した。

「え…」

それは丈一郎達にとっても、私にとっても意外な行動。

サーはいともあっさりと、私の身柄を丈一郎達に返した。