印堂 丈一郎の不可解な生活
その瞬間。

「!!!!!!!」

咢は息を飲んだ。

見てしまった。

見てしまったのだ。

サー…黒十字 邪悪の、血のような真紅の眼を。

咢の頭の中が、クリアに、明瞭になっていく。

今まで感じる事、聞く事が出来なかった事まで可能になる。

外で吹く風の音、戦場と化した敷地内の血の臭い。

驚いた事に、それらを聞き、感じ取っても『不快に思わない』。

その事を感じ取りながら、何の嫌悪も湧かなかった。

そんな自分自身に驚愕と戸惑いを感じた。

これが『人間でなくなる』という事。

『眷属になる』という事。

『化け物になる』という事。

その事に驚きを感じた。

咢は変わってしまった。

眼にかけられた『魅了』と『堕落』の呪いによって、咢の精神と肉体が人でなきものに変貌していく。

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