印堂 丈一郎の不可解な生活
「咢」

サーが咢の名を呼ぶ。

「セシルをこちらへ」

「御意、我が主」

さっき受け止めたばかりの私の体を、咢は物のようにサーの方へと押し返す。

「あ、咢!オメェ何を!」

やっと取り戻した人質を再びサーに返す。

その暴挙に近づこうとした丈一郎の頬を。

「!?」

咢の抜刀した刀が掠めた。

丈一郎を睨む眼光。

その瞳は、化け物の証である真紅…。

「どうするね?調息使い御一行」

サーがさも可笑しげに言った。

「貴様達のお仲間の咢は、今宵この時より、この黒十字 邪悪の眷属…爵位級悪魔へと変貌した。最早人の身ではなく、調息使いでもない」

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