印堂 丈一郎の不可解な生活
「助かったー♪丈一郎♪」

懐く迷い猫みたいに、丈一郎に擦り寄る女の子。

顔見知りらしい。

これまでも、こうして助けられた事があったみたいだ。

「何だよオメェ、まぁた家帰ってないんか?」

「だってぇ、親がうるさいんだもん」

言いながら、女の子は丈一郎のダウンジャケットの袖を摘まむ。

「丈一郎お腹空いたよぉ、何か奢って?」

「しゃーねぇなぁ」

ポケットからクシャクシャになった千円札を取り出し、女の子に渡す。

「飯食ったらちゃんと帰れよ?」

「んー、わかんない♪」

言いつつ、タタッと走り出す女の子。

「ったくよぉ」

彼女の背中を見送りつつ、丈一郎はまた歩き始めた。

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