印堂 丈一郎の不可解な生活
朝から滑稽劇を繰り広げて口論している私と丈一郎の所に。

「痴話喧嘩はそのくらいにしておきなさい」

お爺ちゃんがやって来る。

「「痴話喧嘩なんかしてないっっっ!」」

見事にシンクロする私を無視して、お爺ちゃんはテーブルの上に新聞を置いた。

『路上に惨殺死体』

派手な見出しが躍っている。

「体の各部を食い千切られた死体が見つかったそうだ。これで四件目だ」

「……」

さっきまでのおどけた態度から一転、丈一郎は押し黙っている。

軽薄で軽そうな普段と違い、コイツには分かっている。

これが、人間の仕業じゃないって事が。

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