印堂 丈一郎の不可解な生活
その時だった。

「ぎゃあぁぁあぁぁぁぁあぁあぁぁっ!」

遺跡内部から、耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。

只ならない雰囲気に、周囲が騒然とする。

部外者という事で外を右往左往していた私達も、何事か起こったその気配にいてもたってもいられず、遺跡内部へと駆け込んでいった。

薄暗い遺跡内部。

洞窟とも石組みの神殿ともつかない造りの中へと足を踏み入れると、多くの調査用機材、照明器具の奥に、問題の棺はあった。

棺を取り囲むように立っている研究者や調査員。

その誰もが青ざめている。

無理もない。

保存状態が悪く、隙間だらけの棺。

その棺から醜悪な触手のようなものが伸びて来て、一人の調査員の口腔内へと侵入していたのだ。

< 66 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop