印堂 丈一郎の不可解な生活
20発か、30発か。

無数の拳がベナルに打ち込まれる。

ゾンビやグールが相手なら、その天使の力(テレズマ)でとっくの昔に散滅しているであろう威力。

例えベナルが、ゾンビやグール以上の化け物だとしても、相当なダメージを受けているのは間違いない。

そう思うのは当然。

だけど。

「!?」

調子に乗って殴り続ける丈一郎の拳を、ベナルは不意に摑み取った。

「もういいだろう…調息の威力は大体覚えた」

ベナルが丈一郎の拳を握り締めると。

「うあぁああぁあっ!」

拳を圧迫される苦痛が、丈一郎を襲った。

「な、何てぇ握力だ…拳が…拳が砕ける…!」

「脆い肉体だ…何という脆弱」

ベナルは再び口角をつり上げた。

「所詮は人間の技術だな…調息、恐れるに足りず」
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