印堂 丈一郎の不可解な生活
拳を破壊されるという最悪の事態からは免れた丈一郎。

だけどベナルは、ほぼ無傷のままで丈一郎の前に立つ。

「随分と自慢げに調息の事を豪語していたようだが小僧…どうした、もう引き出しは開き尽くしたか?」

「くっ…」

拳を押さえたまま、丈一郎はベナルを睨む。

無理もないわ。

丈一郎は素質があるとしても、まだ調息使いになって日が浅い。

実戦経験も修行も足りていない彼が、ベナルのような強力な化け物を相手できる筈がない。

「昔から口のよく回る者ほど腕は立たないものだ…実力ある者ほど出来ぬ事は口にしない…人間というのは変わらんな」

ベナルの右腕が振り上げられた。

その右腕に取り付けられているのは手鉤。

突き刺すと引き摺るを同時に行える道具にして武器。

「そ、ソイツで俺を突き刺して引き摺り回す気かよ、市場のマグロみてぇによぉおお」

「お望みとあらば」

ベナルは手鉤を振り下ろす!

「そうしてくれるわ小僧!」

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