印堂 丈一郎の不可解な生活
「全力で潰しておく必要がある。今この場で。未熟者のうちに!」

ベナルが左肩を前に出して前傾姿勢に構えた。

彼の左肩に取り付けられているのは、肩当てを模したギロチンの刃。

嘗てマリー・アントワネットの処刑に使用されたというギロチンを作り直した曰く付きの逸品。

刃そのものに彼女の強力な怨嗟が籠っているという。

いまや魔術品としても通用する逸品。

あんなもので体当たりされたら、丈一郎なんて一溜まりもない。

「このギロチンならば、鎖や手鉤のように受け止めて調息を伝導させるという手も通用しない。受けた瞬間に死ぬがよい」

「くっ!」

歯噛みする丈一郎。

狭い遺跡の中では、逃げ回るスペースもない。

左肩を構え、突進してくるベナル!

逃げ場もなく、身構えるしかない丈一郎。

両者の間合いが詰まる!

次の瞬間!

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