印堂 丈一郎の不可解な生活
だけど現実は残酷だ。

丈一郎と私を逃がしたお爺ちゃんは、既に体が真っ二つにされていた。

あんな状態でまだ調息を練り上げられていた事は驚きだけど、とてもベナルを倒す事は出来ないだろう。

刺し違える事だって出来ない筈だ。

だとすると、ベナルはまだ生きている。

生きて、足止めしたお爺ちゃんの息の根を止めて、今も不死者を増やし続けているかもしれない。

或いは、脅威として認識した丈一郎の行方を捜しているかもしれない。

そんな化け物を止められる可能性があるのは、生き残った調息使いである丈一郎と、その知識を持つ私だけ。

いつまでも落ち込んではいられない。

ベナルを倒す為、人類の脅威を倒す為、私達が動かなければいけないんだ。

たった二人だけだとしても。

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