印堂 丈一郎の不可解な生活
「俺は何とかして、あのベナルって化け物に一矢報いてぇ…爺さんの仇を討って、その遺志を継ぎてぇ」

ギュッと拳を握り締める丈一郎。

その横顔に、いつものいい加減で軽薄な表情はない。

本気で、心の底から、お爺ちゃんの遺志を継ぎたいと思ってくれている。

師から弟子へと受け継がれる黄金の意志。

孫娘として、胸が熱くなる思い。

「無論だ。師匠が討たれたというのならば、俺も全力で協力しよう。だが」

「あん?何か問題でもあるのかよ?」

「いや…」

キッと睨む丈一郎に、咢は涼しげな眼差しを向けた。

「まだ君らの名前を聞いていないと思ってな」

「お?おお、そうだったな、急な事で自己紹介もしていねぇぜ」

丈一郎は私の顔を見た。

「俺は印堂 丈一郎、んでこっちは爺さんの孫娘の辻本 貴遊だ」

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