クリスマスプレゼントは靴下に




「ねぇ、最近の中井のおばば、なんだかヒステリーが酷いよね。」



(お、おばば…?)

お昼休みのトイレ……
個室から出ようとした時、たまたま聞こえて来た声に、私は出るに出られない状態に陥ってしまった。
中井って苗字の者はここには私しかいないから、『中井のおばば』なる者は私のことに間違いない。




「そうよねぇ。
今朝のお説教……ねちっこいったらありゃしない。
前島君も災難だよねぇ……」

声の主が誰なのかもすぐにわかった。
坂本さんと田中さんだ。
私に対してもとても従順で、真面目な子達だと思ってただけに、「おばば」呼ばわりはちょっとしたショックだった。



「ねぇねぇ、もしかして、中井のおばば、前島君に気があるんじゃないの?」

「ええーーーっ!あの年で??
やだぁ…気持ち悪いからやめてよ~!」

「気持ち悪くてもあるってば!
年取ると、ああいうやんちゃな感じの男の子が可愛く見えるみたいだよ。
それでなくても、前島君、けっこう格好良いし……」

「なるほど!で、その前島君が全然自分になびかないから、苛々して八つ当たり……と。そういうわけね?」

「そうそう!」



信じられない。
あの馬鹿前島のどこが格好良いんだ?
最近の若い子の、美的感覚ってものが全くわからない。
そんなことよりも、「気持ち悪い」って何よ!?
私が、前島に振り向いてもらえないから、苛々してるだと……?
よくもそんなことを思いつくもんだ。




「おあいにくさま!」

私はドアをばんと景気良く開けて外へ出た。



「な、中井さん!」

二人は、まるで亡霊でも見たかのような顔をして私をみつめる。



「あの前島が格好良いなんて、あなた達、相~当趣味が悪いのね。
おばばはああいう男には少しもときめかないわ。
知性の欠片もないような男は、お呼びじゃないの!」

固まったままの二人にそう言い残すと、私はトイレを後にした。
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