甘い彼。
「そうやって、自分の腕を握り締めるのは苦しい時のクセかな?手を隠しても見えてるよ」


なんで…なんで…誰も気付かなかったそのクセを見破るの…?


「家に帰りたくないなら、俺のところにおいで?」


「…どうしてそこまで構うの?」


「キミが…桃羽が気になるから?かな、まぁいいや、おいで」


手を差し伸べてくれる五十嵐 奏。


「俺のことは奏でいいよ、俺のとこおいで」


行きたい…けど、また嫌われるかもしれない。


……信じれないよ。


だけど、信じてみたい。


でもまた、裏切られたら?


「ごちゃごちゃ考えてないでおいでよ、ね?」


優しい笑顔でそう言うから、私はその手を恐る恐る握ったんです。
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