白い鳩
「アオ、おはよう」

毎朝必ず、清潔な挨拶をするのは一緒に暮らす皐だ。

「おはよう、今日も早いね。」

私が徹夜明けのときや朝帰りのときに起きてきた皐に会うこともあるぐらい、朝には強いらしい。

今日もリビングに行く頃には支度を済ませ、朝食を食べていた。

「アオは、昨日も遅くまでどこかに行っていたみたいだね。」

皐は挨拶と同様に清潔に笑いながら言う。
私には朝からそんな振る舞いは到底できない。


「終電では、帰ってきたよ。今日は一緒に学校行く。」

「あれ?アオ、今日は授業出てくれる気になった?」

目をすこし大きくして、驚いたように、嬉しそうに、でも期待はしてないだろう。

皐とは同じ大学にいる、

「皐先生の授業には出ないよ。」

立場は違えど。

「なんだ、残念だなあ。アオが来てくれたら嬉しいのに。」

また、皐は清潔に笑う。

「車で行くでしょう?昨日帰って来てから途中まで描いた絵を運んで欲しいの。」


住んでいる都内から、西に進んだいわゆる都下に私が油科の生徒として、皐が先生として通う美大がある。



「また言われちゃうなあ、アオさんとはどういう関係なんですかって。」

「建築学科の人気先生は、大変ですね。」

「油科の、女たらしというより人たらしの先生には負けるよ。」

まるで、知らない人の話をするような口調で言う。
学生時代の同級生のことだというのに。

ああ、今日はあの人学校にいる日だったかな。


「早く、支度しないと置いて行っちゃうよ。」


私は、熱いシャワーを浴びて目を覚まし皐と同じ匂いのするシャツに袖を通した。











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