立花課長は今日も不機嫌

「多分、そうだと思います」


誰かを指名するようなこともなくて、いつも違う女の子がついていたと思う。


あやふやな記憶をたどって答えると


「“多分”というのはいただけないな」


立花さんが口を挟む。

でも何が“いただけない”のか分からなくて、素直に聞き返す。


「いただけないというのは、どういう意味でしょうか?」

「こういう客商売をやっているならば、一度見た客の判別くらいできなくてどうする」


冷ややかな目を向けられて、身体が縮み上がる。

これほどの冷たい眼差しを私は知らない。


「それを、“多分”などと」

「そ、それは……」


50代の男性への受け答えのことを言っているのだということは理解したものの、視線同様に鋭いことを言われ、鼓動が嫌な音を立てる。


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