立花課長は今日も不機嫌

きっと、それのことを言っているに違いない。
ギクリとせずにはいられなかった。

白状するなら早い方がいい。
意を決した。


「あの、立花さん、」

「杏奈ちゃ~ん、キールはどうだった?」


出鼻を挫かれる。
ニコニコしながら再登場した良樹さんに、言葉の先を飲み込んでしまった。


「あ、えっと、美味しかったです。とっても飲みやすくて」

「よかったわぁ。お代わりはいかが?」


すっかり空になったグラスに良樹さんが手を伸ばす。

それとほぼ同時に、立花さんが席を立った。


……トイレ、かな?


立花さんの背中から良樹さんへ視線を戻すと


「杏奈ちゃん、杏奈ちゃん」


おいでおいでと良樹さんが手招きをする。

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