立花課長は今日も不機嫌
③ご指名は、お手柔らかに
久しぶりに持参したお弁当を休憩室のテーブルに広げる。
社員食堂を使う人が多いおかげで、ここ休憩室はたいていガランとしている。
それを幸いに、沙月と私はよく来るのだった。
「わおっ、美味しそう!」
我慢しきれずに、沙月がつまみ食いをしようと指先を伸ばす。
「はい、お箸」
「ありがと」
そんなやり取りをしていると
「やっぱりここにいた」
私たちの姿を見つけるなり、同じ部署の入江くんがニコニコしながら近づいてきたのだった。
社員食堂にいないからここだと睨んで来たらしい。
「いっただきま~す」
「あっ、ちょっと!」
沙月同様に伸びてきた手。