立花課長は今日も不機嫌
目にも止まらぬ速さで、煮玉子を口に放り込む。
「やっぱ旨いですねぇ、杏奈さんの手作り弁当は」
指先に付いた煮汁をチュッと吸い取ると、沙月の隣に腰を下ろしてしまった。
まるで、そこが定位置かのように自然な動作。
「また来たわね」
「鼻が利くと誉めてくださいよ」
沙月の冷ややかな目にも怖気づく様子は全くない。
油断大敵。
どこから嗅ぎ付けるのか、お弁当を持ってくると、必ずこうして姿を現すのだ。
お弁当を作るときは、一人分より二人分(入江くんも見越して、少し多めに)。
その方が美味しくできるし、一人で食べるより二人の方がいい(一応は、入江くんも入れてあげるとして)。
そういうわけで、こうしてたまに沙月を誘っては、お弁当を一緒に食べているのだった。