立花課長は今日も不機嫌
「立花さんに万年筆は渡せたの?」
「万年筆? 立花さんにって一体何の話ですか?」
横からちゃちゃを入れる入江くんに無視を決め込む。
いつも私たちの会話に割り込んでくるけれど、そういう質問をしてくる割には興味がないのだ。
ただの合いの手。
聞き流しのプロなのだ。
だからというか、入江くんがいようがいまいが、私たちはお構いなしに二人の話を進めてしまう。
「うん、渡した……」
“立花さん”という名前が出てくるだけで、なぜかドキンと弾む鼓動。
それもこれも、あの嘘のせいに違いない。
いつバレるかヒヤヒヤするから、立花さんの名前が出ただけで、こんなにも動揺するのだ。
「高くてびっくりしちゃった」