立花課長は今日も不機嫌
手厳しいことを言われて、言葉が出てこない。
立花さんが気難しいタイプだろうということは、纏っている空気で何となく感じてはいたものの、身を持って知った気分だった。
震える手先。
会社の人間だと気付かれてはいけないというプレッシャーと、間違いを糾弾されたことで、動揺が手にまで伝わって――……
――ガシャン!
作りかけていた水割りのグラスを倒してしまった。
「お客様、大変失礼いたしました。お召し物は濡れませんでしたか?」
すぐさま駆けつけたウエイターが機敏な動作でテーブルを拭く後ろから
「あら、こちらは初めてでいらっしゃいますよね」
今度は霧子さんが助けに来てくれた。