立花課長は今日も不機嫌
「やめてください。そんな、気にしていませんから」
むしろ、謝らなければならないのは私の方だ。
あんな形で立ち去ってしまったのだから。
突然立ち上がって最敬礼する岩瀬さんに慌てて座ってもらった。
「あの……」
岩瀬さんが、言いにくそうに言葉を止める。
「……僕のこと、気持ち悪いですよね」
「はい?」
「あ、その……待ち伏せだとか、突然好きだとか……」
「いえ、そんなことは全然ないです」
どちらかと言えば、好意的に捉えてる。
普通に考えれば、女性にしてみたら引いてしまう行動かもしれない。
それが不思議なことに、岩瀬さんだとそうは感じないのだ。
「岩瀬さんを見るとホッとするというか……気持ち悪いだなんてことは全然」
正直に答えると、岩瀬さんはパッと顔を輝かせた。
「そ、そういっていただけるなんて……」
膝の上に置いた自分の手をギュッと握り締める。
「もう、今すぐ死んでもいいくらいですっ」
「ちょ、ちょっと待ってください」
慌てて宥めすかせる。
そうまで言ってもらえる私も幸せだ。
運ばれてきたシャンパンで乾杯すると、岩瀬さんはそれを一気に飲み干した。