立花課長は今日も不機嫌
その助手席の窓が開いていて、そこから覗かせた顔にドキリとした。
「……こんなところでどうしたんですか?」
立花さんだったのだ。
私の質問には答えず、「乗れ」とだけ告げる。
乗れって……。
「聞こえなかったか? 送って行くから乗れと言ったんだ」
「近いですから。大丈夫です」
送ってもらうなんて滅相もない。
右手をぶんぶん振って断ると、運転席のドアが開いて立花さんが降り立った。
「ごちゃごちゃ言わずに、さっさと乗る」
「えっ……」
私の腕を取って、助手席に押し込める。
そうまでされて拒否することもできなくて、されるがままシートに身体を預けた私。
エンジンがかけられると、車は静かに走り出した。