立花課長は今日も不機嫌

少しの逡巡の後、ハッとした。


そうだった!
初めて送ったのに、名前を入力し忘れたのだった。


「ま、内容から佐伯だとは分かったが」

「……すみませんでした。それと、ありがとうございました」


改めてお礼を言う。


「意外とあっさりなメールを送るんだな」

「え……?」

「もっと絵文字やら顔文字やらで埋め尽くされたやつを想像したよ」

「さすがに相手を選びます――って、あっ……」


正直に言ってしまってから慌てて口を押えたところで、言葉は取り戻せない。


「へ、変な意味じゃないですよ?」


それじゃ、どういう意味なのかと自分でも思うけれど。
立花さんは、必死に取り繕う私を顔色ひとつ変えないで見下ろす。

< 135 / 412 >

この作品をシェア

pagetop