立花課長は今日も不機嫌
少しの逡巡の後、ハッとした。
そうだった!
初めて送ったのに、名前を入力し忘れたのだった。
「ま、内容から佐伯だとは分かったが」
「……すみませんでした。それと、ありがとうございました」
改めてお礼を言う。
「意外とあっさりなメールを送るんだな」
「え……?」
「もっと絵文字やら顔文字やらで埋め尽くされたやつを想像したよ」
「さすがに相手を選びます――って、あっ……」
正直に言ってしまってから慌てて口を押えたところで、言葉は取り戻せない。
「へ、変な意味じゃないですよ?」
それじゃ、どういう意味なのかと自分でも思うけれど。
立花さんは、必死に取り繕う私を顔色ひとつ変えないで見下ろす。