立花課長は今日も不機嫌

「なんだかいい雰囲気だったじゃない」

「――沙月」


後ろから突然掛けられた声に振り返ると、沙月が含ませたように笑っていた。


「いつの間にメールを送り合うような仲になったの?」

「――ちっ、違うってば。そんなんじゃないの」


まさか、一部始終を見てた?
立ち聞きなんて悪趣味だ。


「そ? 立花さんの背中が焼け付くんじゃないかってくらい、熱視線送ってたくせに?」

「だ、だから違うってば!」


ただ見送ってただけのこと。
もちろん、熱だってこめていない。


「あららら? 杏奈ちゃん、顔が赤いですよ~」

「それは、沙月が変なこと言ってからかうからでしょ?」


ツンツンと私の頬を突く沙月の手をむんずと掴む。

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