立花課長は今日も不機嫌
――――――――
――――――
「杏奈さ~ん、こっちこっち」
会場に入るなり、入江くんが私を呼ぶ声が聞こえる。
見渡すと沙月と二人、ぴょんぴょん飛び跳ねながら私に手招きをしていた。
「遅かったじゃない」
「ごめん、行こうと思ったところでデータの不具合を見つけちゃって」
沙月が目を瞬かせる。
どうして沙月が驚いた顔をしているのか、その理由は分かってる。
見つけなかったことにしてしまおうかと思って、一旦は帰り支度をした私。
けれど、良心の呵責に耐えかねて、再びパソコンを立ち上げたのだった。
どうも最近の私は、今までと違う。
仕事にきちんと向き合おうとは思いもしなかった。