立花課長は今日も不機嫌

――――――――
 ――――――

「ちょっと嫌なお客だったわね」


店が終わった控室で、霧子さんがウサ耳を外しながら眉根を寄せた。


「……そうですね」


嫌な緊張から解き放たれて、ふぅ、と大きく息を吐く。
おかげでぐったりだ。


「作ったお酒は一口も飲まなかったわね」


ちょっとした騒動から1時間ほどして帰った立花さんたち。


他のテーブルから指名がかかるわけでもなく、席を外すわけにもいかなくて、どことなくピリッとしたムードの時間が過ぎ

霧子さんは、また別のテーブルから指名がかかって、私一人であたふた。


他のお客に比べて短い滞店時間だったことに胸を撫でおろしたものだった。


「霧子さんがヘルプに来てくれて助かりました」


あの場に私一人だったらと思うと、想像しただけで恐ろしい。

< 15 / 412 >

この作品をシェア

pagetop