立花課長は今日も不機嫌
②言い渡された判決
旅行代理店の本社にある情報統括室に席を置く私の仕事は、顧客情報の集計や管理で、日がな一日パソコンとの睨めっこ。
年齢別の旅行先を集計しているうちに、夜の仕事がたたって頭がぼんやりしてくることも多々ある。
そしてそれは、眠気との格闘をしつつ午前中の仕事を終えて、同期入社の沙月(さつき)とのランチから帰ったときのことだった。
デスクに貼られた一枚のメモに目が留まる。
……綺麗な字。
一矢乱れないお手本のような美しい手書きのメッセージにドキッとする。
そこには、【食事から帰ったら、即3階の第2ミーティングルームへ来るように】とあった。
……誰からだろう。
書き忘れたのか、メモには差出人の名前がなかったのだ。
それにしても、何て綺麗な字なんだろう……。
たかだか文字なのに、惚れ惚れしてしまう。
「あ、そのメモ、ちょっと前に立花さんが貼って行きましたよ」
「――た、立花さん!?」
そこに本人がいるわけでもないのに、思わずデスクから飛び退く。