立花課長は今日も不機嫌

言いながら伸びてきた立花さんの手に、ドキッとして身体が硬直する。
よけるなんていう動作は、とてもじゃないけれど追いつかなかった。

その指先が、唇の端をかすめる。


――えっ。


「プリン」

「あ……す、すみません」


恥ずかしいにもほどがある。
立花さんの言う通り、お子様だ。


年相応の大人の女性でいたいのに、立花さんの前ではことごとくダメで、気づいたばかりの恋心にも、追いつけない振る舞い。

焦ってばかりの、場当たり勝負。
その勝利も見えないくらいに遠くて、終着点も見いだせないのだった。



「佐伯、」


ふと呼びかけられた名前に立花さんを見る。

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