立花課長は今日も不機嫌
思いのほか熱を帯びている眼差しに、トクンと鼓動が跳ねる。
立花さん……?
そこで言葉を止めたまま注がれ続ける視線が、私の緊張を極限へと導いていく。
物音ひとつしない静かな部屋の中。
聞こえるのは、私の耳の奥深くで存在をアピールする鼓動だけ。
吸い込まれてしまいそうな立花さんの瞳に、私は瞬きすらできずに、もしかしたら呼吸さえ止まっているかもしれない状態のまま、じりじりと時間だけが過ぎていく。
浅はかな期待も入り混じる中、立花さんがもう一度私の名前を呼んだ。
「佐伯、」
「……はい」
緊張がマックスへと上り詰めたその時――
「杏奈ちゃ~ん、海人の様子はどう?」