立花課長は今日も不機嫌
私はというと、ウインクを返すどころか、軽い会釈を返すことしかできない。
「店は?」
「もちろん閉めてから来たわよ」
「俺なら大丈夫だから。悪かったな、ここまで運んでもらって。それと、変なことを吹き込むのはやめろ」
「あら、変なことだなんて。ねぇ、杏奈ちゃん?」
「え? あ、はい……」
咄嗟に肯定の返事をしたけれど、そこは立花さんに同意するところだ。
良樹さんが妙なことを言うから、こんなことになったのだから。
「とにかく、俺は大丈夫だ」
「私は帰れってこと? なんだか機嫌が悪いみたいね」
言われてみれば、良樹さんの言うように、立花さんの眉間には皺が寄っていた。
「やっぱり私はお邪魔虫だったかしら」
良樹さんがニヤニヤと笑う。