立花課長は今日も不機嫌
「でも、杏奈ちゃんを送って行かなきゃならないでしょう? 海人は運転できないし」
「え?」
立花さんがソファの背もたれから身体を起こす。
「え? って何?」
「あ、いや、タクシーを……」
「もう呼んであるの?」
「……いや、これから……」
え?
まだ呼んでなかったのだ。
てっきり、もうすぐ着く頃かと、寂しい心持ちでいた私。
一瞬私へ向けられた立花さんの視線は、すぐにそらされた。
「それならよかったじゃない。私が責任を持って送って行くわ」
「大丈夫なんですか?」
「もちろんよ。こんな時間までここにいさせたのは私だしね。それとも、私じゃ嫌かしら?」
「そんなことは……」
右手を横に振って否定。
「それじゃ、決定ね」
「宜しくお願いします」
私と頷き合って、立花さんへ向き直る。
「海人、そういうことだから、杏奈ちゃんはお預かりするわよ」
立花さんは返事はせず、首を縦に振って頷いただけだった。