立花課長は今日も不機嫌
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良樹さんの車は、来たとき同様、マンション前に横付けにされていた。
遠くからでもパッと目を引く真っ赤なベンツ。
良樹さんにエスコートされて助手席に乗り込む。
見た目は男性そのものでも、中身はもちろんのこと仕草も言葉も女性そのもの。
そんな良樹さんにエスコートされるのも何だか悪いなと思いながら、シートに身体を沈めた。
「あの、自宅までの道案内ですが、実は……」
「あぁ、分からないってことよね?」
「……すみません」
「そりゃそうよ。土地勘のないところに来たんだもの。大丈夫よ、住所を教えて」
良樹さんに言われてアパートの住所を諳んじると、良樹さんは素早くナビを操作して
「それじゃ、出発するわよ~」
とハンドルを大きく回して、進行方向を変えた。