立花課長は今日も不機嫌
「杏奈ちゃん、そのメークの方が似合ってるわよ」
「はい?」
何と比べているのかと一瞬悩んだけれど
「初めて会った夜、なんだかやけに濃いメークしてたじゃない?」
良樹さんに言われて、すぐに納得できた。
あのときは、プリマベーラの帰りだったから、作りすぎた顔だったのだ。
「だから、さっきホテルに呼ばれたときも一瞬“誰?”って思っちゃったわ」
「そうですよね。すみません……」
良樹さんには話しても大丈夫かな。
「実は、プリマベーラっていうお店でアルバイトをしていて……」
「プリマベーラって、バニーちゃんの格好をしてる?」
「そうです」
良樹さんも知っているらしい。
ブルースカイから近いからかもしれない。
「会社にはもちろんナイショで。でも、この前、立花さんにバレてしまって」
ことの顛末を話すと、良樹さんはその都度「あらま」と合いの手を入れながら聞いてくれたのだった。