立花課長は今日も不機嫌
第3章
①ひとつの嘘が大惨事を呼び寄せる
「それで? いったい何があったの?」
テーブルを挟んで座る沙月が、ジッと私を見つめる。
その目が、うやむやになんてさせるものか、絶対に逃がさないと言っているようで、つい身構える。
「昨日の夜、どこで何をしていたの?」
まるで取り調べだ。
沙月が私の部屋へ訪れたのは、謝恩会の翌日、つまり昨日の今日だった。
しかも、まだ午前10時。
夕べ遅く帰って来た私が目覚めたのは9時。
顔を洗って、やっと部屋着に着替えたところだった。
「立花さんと一緒だったんでしょ?」
立花さんの手を引いて会場を出て行ったのは、沙月も見ていたはずだから、そこを否定することはできなくて。
「……うん」
これから怒涛の質問が待っているかと思うと、ちょっと気が進まなかったけれど、素直に頷いた。