立花課長は今日も不機嫌
いつだろう……?
最初は、それこそ怖いばかりの存在で、あの鋭い目に縮み上がってばかりだったはずなのに。
立花さんとの短い思い出を振り返ってみる。
しいて言えば……
「字を見たとき、かな」
「字?」
沙月は、意味が全く分からないといった顔をした。
デスクに貼られたメモを見たとき。
最初はそれが誰からのものだったのか分からなかったけれど、美しく整ったあの字にドキッとさせられたのは事実。
あの瞬間、立花さんの手書きの文字に恋に落ちた。
それがまさか立花さんだとは思いもしなかったけれど、本人じゃなく、その人が生み出したものを見て恋に落ちるなんておかしいだろうか。