立花課長は今日も不機嫌
――――――――
――――――
「立花さんから内線がありましたよ」
トイレから戻った私に、パソコン画面を注視したまま言ったのは入江くんだった。
「……立花さんから?」
「はい、立花さんです」
ダメだ、私。
立花さんの名前があがっただけだというのに。
小さく跳ね上がった鼓動が、容赦なく私の胸を高鳴らせる。
「杏奈さん? どうかしたんですか?」
突っ立ったままの私を見上げて入江くんが首を傾げるから
「あ、ううん、何でもないない」
慌てて誤魔化して、席に腰を下ろした。
立花さんの内線番号は、何番だろう。
掛けたこともない番号を探して、内線番号リストに目を走らせる。