立花課長は今日も不機嫌
「タクシーを呼ぶから、少しそのまま待ってて」
そう言い置いて、店長がすぐに携帯を取り出す。
一言二言やり取りをすると「すぐに来てくれるって。それじゃ杏奈ちゃん、頼んだよ」と控室から立ち去った。
他の女の子たちは既にフロアに出ているらしい。
霧子さんと二人だけになった。
そばに座った私の気配を感じ取った霧子さんが、力なさげに瞼を開く。
「霧子さん、このままもう少し待ってくださいね。タクシーを呼んでもらってますから」
「……ごめんね、杏奈」
再び目を閉じた霧子さんの額に手を伸ばすと、思った以上に熱くなっていた。
病院に行かなくても大丈夫なんだろうか。
呼吸も荒い。
ただの風邪じゃなく、なにか重篤な病気だったりしたら大変だ。
到着したタクシーに霧子さんと乗り込むと、夜間もやっている病院へと送り届けてもらうことにしたのだった。