立花課長は今日も不機嫌
お礼を言いつつ立ったままもう一度鏡に向かって、ウサ耳を装着。
「それでバッチリね」
私のお尻に付いている丸いウサギの尻尾を、霧子さんがネイルアートを施した長い指先でチョンと弾いた。
「ありがとうございます」
何かしら忘れるのは日常茶飯事の私。
眉毛の描き忘れ、網タイツの履き忘れ、それからそれから……。
――ともかく、挙げたらキリがない。
どこか抜けている私をいつもフォローしてくれているのが、この霧子さんだった。
ここ“プリマベーラ”は、いわゆる“お水の店”。
といっても、一等地にある一流の高級クラブではなくて、郊外の歓楽街にある、どちらかというと良心的な価格のキャバクラだ。