立花課長は今日も不機嫌
「杏奈、ごめんね」
点滴を刺されたところで目を開けた霧子さんは、申し訳なさそうに何度も謝った。
「大丈夫ですから、気にしないでください」
4人部屋の病室には他に患者さんはいなく、消灯時間を過ぎた薄暗い部屋はなんだかちょっと心細い。
「もう、帰るよね?」
寂しそうに呟く霧子さんを放って帰るわけにもいかない。
私が逆の立場でも、一人にはなりたくないだろうから。
「もう少しいてもいいですか?」
パイプ椅子を引っ張ってきて、そこへ腰を落ち着けた。
私の言葉に元気なく笑った霧子さん。
それで少しは安心したのか、ゆっくり目を閉じると、しばらくして規則正しい寝息を立て始めたのだった。