立花課長は今日も不機嫌
「もちろんさ。佐伯杏奈の家の者ですって。娘がいつもお世話になってますって、ちゃんと言ったから安心おし」
母が胸を張って答える。
通常ならば、それが礼儀に違いない。
けれど、今の私にとっては、何よりも仇になるものだった。
胸の中で、何かが大きく音を立てて崩れ落ちていく。
いや、胸の中ばかりじゃない。
その場に立っていられなくなって、思わずうずくまった。
「杏奈? いったいどうしたの?」
立花さんの電話の応対がおかしかったのも当然だ。
亡くなったと聞いたはずの私の両親から内線が入ったのだから。
こんな形でバレることになるなんて……。
史上最悪のバカだ。
あんな嘘を吐いたから罰が当たったんだ。
立花さん、今頃絶対に怒ってる。
……最低だ、私。