立花課長は今日も不機嫌

「立花さんはどこかにお出かけですか？」


すぐそばにいた女の子に聞くと、立花さんのデスクに目を向けた後


「ちょっと席を外してるだけだと思いますよ」


小首を傾げて答えた。


「……そうですか」


席を外してるだけなら、すぐに戻るだろう。
お礼を一言告げて、ドアを閉める。

そして、ふと後方を振り返ったときだった。
通路の向こうから立花さんが歩いてくるのが見えて、弾かれたように駆け寄る。

ところが、私に気付いたにも関わらず、立花さんは歩く速度を落とすことなく、立ち止まった私の横を通り過ぎてしまった。


「立花さん、待ってください」


振り返って呼び止める。