立花課長は今日も不機嫌
そこでやっと立花さんは足を止めてくれた。
背中からにじみ出る怒りを感じて、つい怖気づく。
「用がないのなら行くぞ」
振り返りもせずに告げ、また歩き出してしまったから、慌ててもう一度呼び止めた。
今度は、立花さんの前に回り込む。
見上げた顔は、予想していた通りの厳しい表情が迎え撃つ。
でもここで怯んでいるわけにもいかない。
「立花さん、申し訳ありませんでした」
深く頭を下げる。
立花さんが今、どんな顔をしているのかが推測できて、顔を上げられない。
震え出す手足。
「あんな嘘を吐くとは、大した度胸だ」
「――ごめんなさい」
「史上最低の女だな」
「――っ」
返す言葉もなければ、頭も上げられなかった。
立花さんの足がゆっくりと向きを変える。
そして、他に言葉を残すこともないまま、下を向いたままの私の視界から姿を消したのだった。