立花課長は今日も不機嫌
「母さんは今まで悩んだことがないから、そんなお気楽なことが言えるんだろう」
「あらっ、失礼ね、父さんったら。ねぇ、聞いた? ひどいと思わない?」
私に振らないでほしい。
いつもの痴話げんかが始まってしまった。
仲が良いからこそのちょっとしたケンカなんだろうけれど。
……でも、父の言う通りだ。
気になるなら、こんなところでぐずぐずしてる場合じゃない。
何より、お金を返さなくてはならないのだから。
「お父さん、お母さん、ごめん。私ちょっと行かなきゃならないところがあるの」
椅子を鳴らして立ち上がった。
「急ぎなの? 食べてから行けばいいのに」
「いいじゃないか、母さん。行かしてやれ」
引き留めた母を父が牽制する。
「まぁ、父さんがそう言うならいいんだけどね」
母はちょっと不服そうだったものの、一応納得したものとみなして、二人を残したまま店を後にした。